レパトア解析Q&A

1:基本情報

  • Q.レパトアとは何ですか?
  • A.主要な免疫細胞であるT細胞やB細胞は、多様な抗原に反応できるように、個々に異なる特異性を持つT細胞受容体(TCR)やB細胞受容体(BCR)を細胞表面に発現しています。このTCRやBCRによって特徴づけられるリンパ球の集団をTCR、BCRレパトアといいます。レパトアは、もともとはレパートリーと同義のフランス語です。
  • Q.レパトアはどこから生まれてきますか?
  • A.免疫システムは、多様な抗原に反応できるように、遺伝子再構成や体細胞超突然変異という機構によって、多様なTCRやBCRを創出する仕組みを持っており、それらの機構を通してレパトアが形成されます。遺伝子再構成は、主にリンパ組織(骨髄ではB細胞、胸腺ではT細胞)で起きます。
  • Q.レパトアの規模はどのくらいですか?
  • A.TCRでは10の18乗、BCRでは10の14乗におよぶと推測されています。

2:解析技術

  • Q.レパトア解析とは何ですか?
  • A.レパトア解析とは、TCRやBCRを構成しているV遺伝子やJ遺伝子の使用頻度やCDR3領域*の塩基配列を調べることで、TCRやBCRの特異性や多様性を明らかにする解析です。TCRやBCR遺伝子の塩基配列を決定するために、mRNAから遺伝子増幅しますが、弊社では独自に開発した非バイアス遺伝子増幅法を用いており、網羅的でより正確なレパトア解析を実施することができます。
    * CDR3領域:相補性決定領域。TCRでは抗原ペプチドを、BCRでは抗原に直接結合する領域であり、特に多様性の高い領域のこと。
  • Q.何を解析対象とするのですか?
  • A.弊社のレパトア解析では、T細胞受容体(TCR)に関してはα、β、γ、δ鎖の4種類、B細胞受容体(BCR)に関しては、重鎖の5種類(μ(IgM)、γ(IgG)、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE))、軽鎖の2種類(λ(IgL)、κ(IgK))を解析対象としています。
  • Q.Adaptor-Ligation PCR(AL-PCR)について教えてください。
  • A.AL-PCRは5’末端にアダプター配列を結合し、アダプターと各遺伝子の定常領域(C領域)に設定した1組のプライマーセットを用いてPCR増幅を行います。それによって、すべてのTCRまたはBCR遺伝子について、バイアスをかけることなく増幅できる方法です。詳しくは技術紹介のページをご確認ください。
  • Q.他の技術と比較して優位性はありますか?
  • A.弊社で採用しているAL-PCRは、原理的に遺伝子増幅時のバイアスが起こりません。従って、フローサイトメトリー(FACS)解析などで得られるレパトア解析の結果と良く相関します。対照的に、一般的に用いられるMultiplex PCR法では、V遺伝子やJ遺伝子に特異的なプライマーを多数用意し、混ぜ合わせて使用するため、プライマー間の増幅効率の差によってPCRバイアスが発生します。また、BCRについては、V遺伝子やJ遺伝子に高頻度に体細胞超突然変異が発生するため、設計したプライマーとテンプレートとの間でミスマッチが起こり、一部の遺伝子でPCR増幅不良が起こります。AL-PCRでは、変異が起こりうる領域にプライマーを設計しておりませんので、より正確なレパトアを反映できるという優れた特長があります。
  • Q.フローサイトメトリー(FACS)法と比較して何が違いますか?
  • A.現在市販されているFACSを用いたレパトア解析用試薬は、ヒトTCRVβ鎖に対する抗体パネルを使用しています。この抗体パネルでは、現在Vβ鎖の7割程度に対応していますが、Vα鎖に対する抗体はほとんど入手されておりません。また、FACS法では、多くの細胞が必要なため、解析可能な検体が限定されるだけでなく、組織内に浸潤した細胞の解析には適していません。弊社のレパトア解析は、検体から抽出したTotal RNAを用いますので、多様な試料からの解析が可能です。
    網羅性につきましては、次世代シーケンサーを用いて大規模にシーケンスし、専用ソフトにてデータベースとの相同性検索、CDR3アミノ酸配列変換、リード数集計をするため、すべてのV遺伝子を網羅しているほか、J遺伝子のレパトア、CDR3アミノ酸配列を含めたクローンの存在頻度まで解析が可能となります。なお、弊社レパトア解析の結果は、FACS解析の結果と相関することを確認しておりますので、FACSによるレパトア解析を実施されております先生方でも安心してご利用いただけます。
  • Q.使用しているシーケンサーについて教えてください。
  • A.使用機器はイルミナ(株)のMiSeqと、ロシュ・ダイアグノスティック(株)のGS Juniorになります。
  • Q.シーケンスデータの解析はどのように行いますか?
  • A.A:シーケンス完了後、弊社で独自に開発しましたレパトア解析ソフト(Repertoire Genesis)を用いて自動的に解析します。シーケンスで得られたリード毎に、V遺伝子、J遺伝子のデータベースと相同性検索を行い、さらにCDR3領域のアミノ酸配列を特定します。共通する組み合わせをもつリードを集計し、検体に含まれる上位のクローンを特定します。またV遺伝子、J遺伝子でクロス集計した3Dグラフも生成できます。クローナリティの解析に有用なCDR3鎖長解析について、次世代レパトア解析から得られたCDR3配列を用いて、デジタルCDR3スペクトラタイピングとして再現することも可能です。
  • Q.TCRV鎖遺伝子名がよくわかりません
  • A.複数のTCRV鎖の命名法があり、それぞれ順番が異なります。IMGTによる比較表をご確認ください。以前はFACS解析用の抗体などで使用される「Vβ」等の表記が用いられてきましたが、現在ではゲノム上の遺伝子の位置に基づいて付番されたIMGT分類(TRAVやTRBVと表記)が主流となっており、弊社でもその分類に基づいて表記しております。
  • Q.解析ソフトはオリジナルですか?
  • A.次世代シーケンサーから出力されたデータを全自動で高速かつ高精度に処理するためにレパトア解析専用プログラム(Repertoire Genesis)を独自に開発しています。

3:レパトア解析依頼について

  • Q.検体の量はどのくらい必要ですか?
  • A.レパトア解析は、検体中に解析対象となるリンパ球が含まれることが前提となります。健常者の全血であれば5mL(末梢血単核球細胞として5×10の6乗個)、組織であれば100mg程度が一般的ですが、リンパ組織でない部位(皮膚組織など)では、検体量を増やす必要があります。また特定の細胞をCD4やCD8などでソートした場合は、10の4~5乗個程度でも解析することが可能です。解析目的や検体採取量についてご相談頂けましたら、個別に適切な方法をお伝えいたします。
  • Q.自分で抽出したRNAでレパトア解析ができますか?
  • A.可能ですが、レパトア解析を始める前に、弊社にてアジレント社のTapeStationにて品質チェックをさせて頂きます。RINe値が極端に低い場合(1~5)には、良好な結果が得られない恐れがありますので、実施前にご相談させて頂きます。中止される場合につきましては、品質チェックにかかった費用をご請求させていただきます。
  • Q.ゲノムDNAでレパトア解析はできますか?
  • A.弊社のレパトア解析はtotal RNAを材料とした解析になります。従いましてゲノムDNAからの解析は行っておりません。
  • Q.解析する組織の保管方法を教えてください
  • A.RNA安定化試薬(RNA later)に浸漬させた状態で保管することをお勧めします。詳しくは組織採取方法の弊社プロトコールをご確認ください(リンク)。
  • Q.検体は返却してもらえるのですか?
  • A.原則、検体の返却は行っておりません。検体から抽出したTotal RNAにつきましては、残余分を返却することが可能です。
  • Q.検体はどのように送付すればいいですか?
  • A.弊社検体送付プロトコールに従い、送付ください(リンク)。
  • Q.納期はどのくらいですか?
  • A.通常1~2か月程度で納品させていただいております。納期の目安は、検体をお受けした時点で解析スケジュールを組ませて頂きお伝えしますが、解析機器の混雑状況に応じて変動いたします。学会や論文等の締め切りがあるなど、お急ぎになられる先生方につきましては、別途ご相談ください。
  • Q.シーケンサーを占有で解析依頼はできますか?
  • A.次世代シーケンサーでは大量のリードを得ることができるため、あらかじめ識別配列(index配列、MID配列)を付加した複数サンプルを混合して、シーケンスを実施いたします。そのため、注文検体数が1回のランに相当する数に満たない場合は、基本的に乗合いとさせて頂きます。占有で解析されたい先生方は、その旨お伝えください。別途お見積りさせて頂きます。
  • Q.リード数はどのくらいあれば良いですか?
  • A.必要なリード数は解析対象によって異なります。多様性の高い試料の場合、特定のTCR遺伝子が0.001%未満であることを証明するためには、有効リード数が10万リード以上必要となり、実際のシーケンスで得られる総リード数はその1.5~2倍程度が必要となります。一方、樹立したT細胞クローンのTCR遺伝子を確定する場合は、1,000リード程度で十分かと考えられます。あくまで目安ですが、弊社では、MiSeqを用いた場合に得られるリード数は、有効リード数として10万リード、GS Juniorでは1万リードを目標値としております。依頼時に解析対象についてご相談頂けましたら調整させていただきます。

4:解析結果の評価

  • Q.解析結果の見方ついて教えてください
  • A.2Dグラフは、検体中に存在するTCRやBCRについて、各V遺伝子やJ遺伝子がどれくらい使用されているかを示しています。対照試料との間で、使用頻度を比較することができ、異常値を見つけることができます。VJ遺伝子の3Dグラフは、TCRやBCRにおける各VJ遺伝子の組み合わせの使用頻度を示しています。より詳細、かつ俯瞰的に全体のレパトアを見ることができます。特定のVJ遺伝子の増加から、クローナリティの変化を検出することもできます。集計ランキングは、検体中に存在するTCRまたはBCRのユニークリードについて、コピー数順でランキングしたものです。多様性が高い検体の場合には、低コピー数のリードだけから成り、クローナリティの高い検体では、少数の高コピーのリードが検出されます。関心のあるリードのCDR3配列を利用して、特定のクローンが他の試料に存在するか、増減したか等、解析対象と目的によって、様々な比較が可能です。ご不明な点は弊社にご相談ください。
  • Q.3Dグラフではピークが高いがランキングで上位にいない理由は何ですか?
  • A.VJ遺伝子の3Dグラフは、同じVJ遺伝子の組合せを持つ遺伝子の頻度を示しています。同じVJ遺伝子の組合せでも、CDR3配列が異なる遺伝子が含まれていますので、3Dグラフでの高いピークが、必ずしもクローンの存在を示しているとは限りません。クローナリティを評価する場合は、最終的にランキングの結果をご確認ください。
  • Q.検体間での比較はどのように行えば良いですか?
  • A.「解析結果の見方」に共通しますが、比較する検体間で2Dあるいは3Dグラフの使用頻度を比較することができます。ランキングデータを利用する場合は、関心のあるクローンのCDR3配列を用いて、目的の検体の全配列に対して検索をかけると効率的かと思います。ご不明な点は弊社にご相談ください。
菌叢解析Q&A
  • Q1:菌叢(きんそう)とは何ですか?
  • A.自然界には多種多様な細菌が存在しています。それらの細菌はある環境下において単一の菌種で構成されることは少なく、多種多様な菌種から構成されています。たとえば糞便や口腔内、土壌や河川では、1,000種類以上もの細菌が一定の菌叢を構成し存在することが分かっています。
  • Q2:菌叢解析とは何ですか?
  • A.一定の環境内で構成される細菌の種類や分布を特定する解析方法です。
  • Q3:何を解析対象とするのですか?
  • A.細菌の種類や分布を網羅的にかつ効率的に解析する方法として、サンプリングした試料から細菌のゲノムDNAを抽出し、菌種に関わらずに固有の配列が保存されている16S rRNA遺伝子の配列解析を実施し、菌種間の多少の配列の違いを基にして細菌叢を明らかにしております。
  • Q4:他の技術と比較して優位性はありますか?
  • A. 従来法では、検体を希釈し、寒天培地などにプレーティングして個々の細菌として分離した後、様々な細菌同定試験や16S rRNA遺伝子配列解析で個々の菌の同定を行う方法や、16S rRNA遺伝子をPCR増幅後に制限酵素消化、電気泳動し、バンドの位置の違いで菌叢を同定する方法が用いられていました。しかしこれらの手法では、一度に同定できる細菌種は数種~100種類程度と限定されること、間接的に菌叢の変化は解析できるものの具体的な細菌の同定ができないなど問題点がありました。
    次世代シークエンサーを用いた「フローラ・ジェネシス」16S rRNA菌叢解析では、検体や試料中に存在する細菌を網羅的に解析可能で一度に数千~数万の細菌の同定ができます。従来の方法と比べ桁違いの菌叢情報を得ることが可能になりました。
  • Q5:メタゲノム解析とは何が違いますか?
  • A.いわゆるメタゲノム解析は次世代シーケンサーを用いて検体中に存在する全ての細菌ゲノムを一度に解析する方法です。得られる情報は非常に多いですが、1検体あたりのシーケンサー占有量が増えますのでコストが高くなります。16S rRNA菌叢解析も広義の意味ではメタゲノム解析の一部ですが、部分的な遺伝子のシーケンス解析にとどまるため、一回の次世代シーケンス解析に、複数の検体を載せることが可能となり、そのぶんコストは安価となります。対象とされる研究によって使い分ける必要があります。
  • Q6:16S rRNAのどの領域を増幅していますか?
  • A.弊社の菌叢解析では、主にV3-V4領域をターゲットとして解析しております。ご要望に応じてV1-V2領域やほかの部位の解析も可能です。
  • Q7:どのようなサンプルが解析可能ですか?
  • A.細菌が含まれる検体であれば基本的に可能です。糞便や唾液などが主要な検体となります。このほか、細菌感染したヒト、動物組織なども解析は可能ですが、宿主のDNAが混在し解析が難しい場合がありますので事前にお問合せ下さい。
  • Q8:サンプルの調製、輸送方法は?
  • A.菌叢解析では検体に含まれる菌の分布をみます。そのため、細菌が増殖するような状況を極力回避する必要があります。弊社では基本的にすぐ冷凍することをお勧めしております。また輸送につきましても、冷凍便にて弊社まで発送するようにしてください。
  • Q9:サンプルの量はどのくらい必要ですか?
  • A.細菌が含まれる量によって異なります。糞便であれば100mg程度(大豆大程度)、唾液であれば500uL程度、その他は検体に応じて異なりますので、弊社までご連絡ください。
  • Q10:使用しているシーケンサーの機種は何ですか?
  • A.弊社ではイルミナ社のMiseqを使用しています。
  • Q11:シーケンスデータの解析はどのように行いますか?
  • A.シーケンス解析で得られたFastqデータを元にして、弊社専用の菌叢解析ソフトにて系統樹解析、分布図、ランキングなどの一次解析を行います。
  • Q12:どのようなデータを返してくれますか?
  • A.菌叢解析ソフトを用いた一次解析データ、シーケンスで得られたFastqデータをお返しいたします。オプションにて二次解析をご希望されたお客様には、二次解析データもお戻し致します。
  • Q13:オプションではどのような解析が可能ですか?
  • A.多様性解析、主成分分析、多変量解析などが可能です。菌叢解析と併せて臨床データや他の解析データ間で、関連が認められるかなどの複雑な解析を行うことにより、意義のあるデータを導き出すこともできます。
  • Q14:解析ソフトはオリジナルですか?
  • A.はいそうです。開発はビッツ株式会社と共同で行っており、お客さまにとって分かりやすいレポート出力、またTCR/BCRレパトア解析をはじめとした複数の要素との関連解析も可能としております。
  • Q15:納期はどのくらいですか?
  • A.基本的に1~2ヶ月程度かかります。これは複数の検体をまとめてシーケンス解析するため、混雑状況によっては変動致します。短納期や占有にて解析をご希望される場合は、別途お見積もりいたします。
  • Q16:リード数はどのくらい読みますか?
  • A.5~10万リードを目標としてシーケンス解析を行います。複数検体をまとめてシーケンス解析するため、リード数の指定はできませんが、解析時にリード数を限定して実施することができます。
  • Q17:解析結果の見方を教えてください。
  • A.菌叢解析結果の報告書には、ご提供いただいた依頼者情報、検体情報などに加え、同定された最近の分布データ、ランキングデータなど個別のサンプルの菌叢データ、あるいはサンプル間の違いを解析した比較データなど詳細情報が記載されております。
  • Q18:サンプル間比較はどのように行えばよいですか?
  • A.複数の検体をご依頼されました先生方には、分布図の表記を複数検体分並べたものでご提供いたします。またランキングデータを元にして細菌の種類別に%で比較されることもお勧めしております。これらは一次解析で行えるものですが、多変量解析などのより複雑な二次解析につきましては別途ご連絡ください。
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